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<南日本新聞(1997年4月3日掲載)より抜粋> 屋久島の南に位置する屋久町中間の出身。 そこから望む山々をたとえて「岳南」という。 二十一年前、初めて屋久杉の声を聞いた。 父親に「そろそろ戻って来んか」と言われて、何をするかも決めないまま、関西から帰郷。 友達に連れられて入った屋久杉工芸店で「違う」と声がした。 店を見て回るうち今度は工芸品の一角から、はっきり同じ声が。 そして店を出るとき、念を押すように背後から「違う」。三たび屋久杉が語り掛けた。「このとき『屋久杉と付き合っていこう』と決めた。 屋久杉を通じて生かされていることを確認していきたい、と」。なりわいにしようとは思わなかった。 関西での仕事は、高級紳士靴下の製造で木工など一度も手掛けたことはない。それでも「やろう」と決めた。 すべて手作業。機械などはない。 世間で屋久杉工芸がどんなシステムで作られているかも知らなかった。 感覚、技術を磨く日々が続く。大きな屋久杉をカンナで削り、バイト(刃物)で形を整えていく。 根を詰めすぎて動かなくなった手首を包帯で縛り、それでも創作を続けていく壮絶な作業だった。 屋久杉工芸は組合を通さなければ、いい木材が手に入らない。 そんな“商売”の基本的なこと、組合の存在さえ、創作を始めてから三年して初めて知った。「屋久杉の望む姿に」が一貫した仕事ぶり。そのための 工夫と努力で技術は向上したが、「売ろう」という気持ちはわかなかった。 「事情を許せば全部手元に置いておきたいくらい。ぼくと屋久杉の気持ちを理解する人に大事に使ってほしい」。仲間は「気違い」と呼んだ。 「屋久杉は、たった1.5cmに百年の年輪を刻んでいる。 たった四十、五十年しか生きていないわれわれの都合でどうして望みもしない形に変えられようか」 一つひとつが個性的な屋久杉が求める姿は多種多様だ。 「一ミリでも削りすぎると理想の姿にはならない。 仕上げの段階になると、人さし指と中指の感覚だけが頼り。 “繊細”な神経が求められる」という。 |
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